フィレンツェだより
2007年6月9日


 




プッチーニ・ヴィラ博物館
トッレ・デル・ラーゴ



§トッレ・デル・ラーゴ

ルッカは大きな都市だが,その近くにあるヴィアレッジョは小さな町で,私たちが自力で行くのはなかなか難しい.ましてやその町の中とはいえ,トッレ・デル・ラーゴに行こうと思ったら,さらに大変だ.


 幸運なことに車でそこに連れて行っていただいた.ルッカで生まれた偉大なオペラ作曲家ジャーコモ・プッチーニのヴィラと墓所があるところだ.

 オペラが好きでプッチーニが嫌いという人は珍しいだろう.聴きやすい,わかりやすい,それでいて他に誰も書けないような美しい旋律を紡ぎ出す,天才という言葉はこの人のためにある,というような芸術家だ.

 日本でも「蝶々夫人」はもちろんのこと,「ラ・ボエーム」,「マノン・レスコー」,「トスカ」,「トゥーランドット」がよく上演され,人気があるし,他にも「西部の娘」,「ラ・ロンディーネ」,「三部作」もCD,DVDで鑑賞される.

 その彼が,生まれ故郷近くのこの地にヴィラを購入し,そこで作曲もし,墓もあるとなれば,クラシック音楽を愛する全ての人が訪れてみたいスポットだろう.

写真:
ヴィラのすぐ前の
湖のほとりに立つ
プッチーニの銅像


 現在ヴィラは博物館として公開されており,愛用のピアノをはじめとする数々の遺品が残る部屋を当時のままに見られる.また,マーラーやワグナーの当時撮られた写真,三浦環が,「恩愛なる先生に」という古風な日本語とともにイタリア語で書いた葉書(蝶々夫人の姿の写真が印刷されている),狩と自動車が好きだった彼の愛用品の数々,訪れた有名人の贈り物なども展示されていて,興味は尽きない.

 未完のまま遺作となった「トゥーランドット」の乱れた筆致の楽譜,その作品を補筆したアルファーニの写真と手紙,死に際して書いた妻エルヴィラへのメモなど,心揺さぶられる品々もあった.

 庭も良かった.大きなアジサイが美しく咲いているのが印象的だった.

 ヴィラの前にある湖の船着き場には,遊覧船が停泊していた.この遊覧船にピンカートンという名前がつけられていたので,「帰ってこなかったどうしよう」という冗談が出て,皆で笑いあった.

写真:
湖の船着き場


 今回の訪問は,日本から来て,こちらで学んでいる若い芸術家の希望で組まれたものだった.私たちはそれに便乗させていただいたわけだが,希望と才能に溢れた若者は,こうして自分と違う分野の天才に刺激を受けて,さらに大きく羽ばたいて行くのだろう.



 博物館のブックショップで,英語版のガイドブックと,私たちも見た愛用のピアノの前にプッチーニが足を組んで座っている写真と,男前でダンディな姿が大写しになった写真の絵葉書を購入した.入場料が1人7ユーロだったので,合計で26ユーロの費用で稀有の体験ができた.

 湖の近くの店で,トッレ・デル・ラーゴ(湖の塔)と彼の彫像を使ったマグネット付きの焼物を見つけた.記念に購入.湖水(マッサチュッコリ湖)の動植物を解説した小冊子と一緒で,5.8ユーロだった.

写真:
切手のようなデザインの
焼き物のマグネット



エノテカのお披露目
 右下の写真は,寓居近くにある中央市場(メルカート・チェントラーレ)だ.普段飲むワインはここの1階にある「エノテカ・ロンバルディ」で買っているが,この日,そのエノテカが市場内にもう一つ新しい店舗を出す,お披露目の招待状をいただいていた.ヴィアレッジョからの帰りが思っていたよりも早かったので,フィレンツェに戻ってきた足で,そのまま中央市場に行ってみた.

写真:
中央市場
(メルカート・チェントラーレ)


 1階の中央付近にある新店舗は既に大盛況で,多くの人で賑わっていた.いつもワインの相談に乗っていただいている方が私たちを見つけ,声をかけてくれて,上等のワインを振舞って下さった.チーズやソーセージなどもおいしかったので,サラミを少し買い,ご祝儀代りに,テイスティングをしておいしかった赤ワインと,先日すすめていただいて,知人へのお土産にした白ワインを今度は自分たち用に購入した.






 わが家には,結婚記念日に飲もうということで,同店で勧められて購入した,私たちとしては大変な贅沢である50ユーロのワインも含めて2本が既にストックしてあったが,これで4本の買い置きができた.

 さて,下の写真はその4本を写したものです.結婚記念日用の50ユーロのワインはどれでしょう?ヒントは,必ずしも値段の意味ではありませんが,ラテン語で「高い」と書いてあります.





わが家の
ささやかなワインストック