フィレンツェだより |
バディア・フィオレンティーナ教会 鐘楼 |
§通好みの場所
バディア・フィオレンティーナ教会には以前から行こうと思っていた.堂内は,地味な外観からは想像できない立派さで,天井の重厚な木の質感がまた素晴らしかった. ここで見られる作品としては,フィリピーノ・リッピの「聖ベルナルドゥスの前に現れる聖母マリア」が有名で,確かにこれは傑作だったが,他にも立派な作品がたくさんあった.ジョヴァンニ・バッティスタ・ナルディーニの「カルヴァリオの丘登坂」,フランチェスコ・クッラーディの「聖マウルスに規則を渡す聖ベネディクトゥス」,ヴァザーリの「被昇天の聖母と二人の聖人」などが印象に残る.
翼廊に,この教会の開基に関わった10世紀のトスカーナ侯ウーゴの墓がある.彼の死は1001年だそうだが,墓碑は15世紀の芸術家フィエーゾレのミーノによるものだ.彼の作品としては他に「聖母子と聖ロレンツォと聖レオナルド」があり,これも傑作だった.
聖ベネディクトゥスの礼拝堂には,14世紀のナルド・ディ・チョーネのフレスコ画があって,これも大変な傑作だと思う.ユダが首を吊っている絵もめずらしいと思った.
祭壇の脇の通路から,修道院の「オレンジの回廊」に出られる.2層になった珍しい回廊で,聖ベネディクトゥスの生涯を描いたフレスコ画とその下絵が見られる.この日は美術学校の学生たちが写生していた.
ベネディクトゥスは6世紀半ばに亡くなった聖人で,モンテ・カッシノ修道院を開き,修道生活の規則を定めて,西欧の修道院の原型を作った人物だ.彼の生涯を描いたフレスコ画は5月にサン・ミニアート・アル・モンテ教会の聖具室でも見ている. カーザ・ブオナローティ カーザ・ブオナローティには,ミケランジェロの未完の浮き彫り彫刻「ケンタウロスの戦い」と「階段の聖母」があり,この博物館の目玉とされる. 両作品とも確かに大傑作で,いつまで見ていても飽きない.しばしばこれ以外には期待しない方が良いように言われることもあるようだが,そんなことはない.河の神の裸体の模型があり,これもミケランジェロが完成をめざした作品のためのもので,素晴らしかった. ミケランジェロを描いた肖像画や彫刻,ミケランジェロの作品を模倣した絵のコレクションにも見るべきものがあった.ミケランジェロのデッサンは研究者だけに公開されるようだが,一部は見せてくれていた. ミケランジェロの遺族とその子孫が19世紀まで暮らしたこの屋敷は雰囲気もよく,見るべきものたくさんあり,一人6.5ユーロの入場料は若干高めだが,かなりの満足が得られる場所であった.
考古学コレクションの中に,考古学博物館で見たのと似たポリュネイケスとエテオクレス相打ちの浮き彫りがある骨灰棺があった.こっちのものは彩色が施されている所に特色があり,良いものを見ることができた. ![]()
![]() 先日セミナリオで聖マリア・マッダレーナ・デ・パッツィ没後400年のモストラを見たが,彼女の肖像が堂内中央に置かれていた(下の写真).彼女の祝祭日は5月27日とのことだが,それに関係しているのだろうか. 帰りにメディチ・リッカルディ宮殿の前にある教会のところで営業している露店の古本屋によった.先日フランス語版のガイドブックを買ってしまった店だ.現代ギリシアの詩人カヴァフィスのイタリア語との対訳詩集(トリノ,1992)を売っていたので,購入した.これは5ユーロだった. |
聖マリア・マッダレーナ・デ・パッツィ ドゥオーモに置かれていた肖像 |
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