フィレンツェだより
2007年5月26日


 




アルノ川に面して
サン・フレディアーノ・イン・チェステッロ教会



§アルノ川の対岸

今日はフィレンツェ大学の中嶋先生ご夫妻のお宅にお茶のご招待をいただき,お邪魔した.


 様々なことをお教えいただき,お手製の水羊羹をご馳走になり,2匹の優美な猫とも交流させてもらった.

 帰りに,いつもアルノ川の対岸から,そのクーポラの姿に惹かれていたサン・フレディアーノ・イン・チェステッロ教会を訪ねることができた.

 教会が建ったのは17世紀の終わり頃なので,フィレンツェではそれほど古いものではない.教会自体もカルメル会の修道女たちよって開基されたのが15世紀半ばということで,やはり新しい方だろう.

 シトー会の人々(チステルチェンシ)によって17世紀に再建されたのが,チェステッロという名のもとになっていると,フィレンツェ市が立てた看板の説明にあったが,フランス語版ガイドブックにはチェステッロというイタリア語(小さな籠)という語に関係させて別の説明があった.



 堂内は明るい空間だった.近くのサンタ・マリーア・デル・カルミネ教会と内部の明るい雰囲気が似ているように思える.内部の壁はペパーミント・グリーンを基調にしており,オルガンも可愛らしい.

写真:
可愛らしいオルガン


 両側の壁に複数の礼拝堂があり,彫像や絵画があるのは他の教会と同じだが,ここで一番良かったのは,15世紀の画家ヤーコポ・デル・セッラーイオの「キリスト磔刑と聖人たち」だ.帰宅後,中嶋先生が訳された『最新完全版ガイドブック フィレンツェ』を見たら,この絵の名前が挙げてあった.鉄格子の上で火あぶりになっている若く美しい聖ラウレンティウス(ロレンツォ)が印象に残った.

 フィレンツェでは新しい教会であるし,日本式に言うと国宝,重文級の作品に満ちているわけではないが,内部の美しい空間もさることながら,あの愛らしいクーポラがアルノ川沿いに見えるのはフィレンツェの宝と言っても過言ではないのではなかろうか.

 サン・フレディアーノ教会の隣に,正確にどういう意味なのかはわからないが,フィレンツェ大司教神学校(セミナーリオ・アルチヴェスコヴィーレ・フィオレンティーノ)らしきものがあり,創設400年を記念して,特別展があると街中にポスターが貼ってある.見に行こうと思っている.



 いつもはアルノ川の対岸を歩いて,サン・フレディアーノ教会を見ているが,今日は反対側からオンニサンティ教会とその鐘楼を見た.両側を5つ星ホテルにはさまれて小さく可愛らしくしか見えないが,あの教会には世紀の宝物がたくさんあるのだ.

 アルノ川自体は決してきれいな水が流れているとは言えないが,気候もあって,漕艇の練習をしたり,ゴムボートで釣りをしたりという風景が見られた.

写真:
5つ星ホテルの間に
オンニサンティ教会


 カッライア橋を渡って帰宅する途中,有名な新市場のロッジア(開廊)の脇を通った.ここで,オリジナルはヘレニズム時代のものだが,ローマ時代の大理石のコピーがウフィッツィ美術館にあるブロンズの「猪」(チンギアーレ)像を見た.

 ここでは「子豚」(ポルチェッリーノ)と呼ばれ,観光客に撫でられて立派な鼻はピカピカになっている.像の下は水場になっていて,蛙,蟹,蜥蜴の浮き彫りもあったが,これらもピカピカになっていた.この「猪」像を作ったのはメディチ家礼拝堂の「コジモ2世」の巨像の作者ピエトロ・タッカだそうだ.

写真:
鼻がピカピカの
ポルチェッリーノ


 今日で滞在3か月目に突入する.先月はレオナルドというワインを開けて祝ったが,妻の友人でこれを読んで下さった方が,「受胎告知」の特別展を開催した上野の国立博物館でも同じワインを売っていたと教えてくださった.

 今日は,そのワイナリーの息子さんが作っているという「ダ・ヴィンチ」というワインを開けた.クラシコではないキャンティでリザーヴ(リセルヴァ)は珍しいそうで,わが家にしては贅沢だが,15ユーロ弱でこの味は破格に思えるほど美味であった.

写真:
キャンティのリセルヴァ
「ダ・ヴィンチ」


 朝食はヴィーヴィ・マーケットで3個1パック5.40ユーロ(1個300円強)の冷凍の「おかめ納豆」(ソイア・フェルメンタータ)1個を2人で分けて食べ,ご飯に味噌汁.午後のお茶の時間には中嶋邸で水羊羹をいただいた.明日は中華飯店で外食の予定.