フィレンツェだより |
サン・ガエターノ教会 コンサートの後 |
§サン・ガエターノ教会のコンサート
教会での演奏会だし,オルガン曲もあるかと思ったが,アカペラの宗教曲ばかりだった.合唱はアメリカ(スターティ・ウニーティ),ケンタッキー州ウィルモアのアズベリー・カレッジのコレギウム・ムジクムという団体で,指揮は同大学で音楽理論その他の科目で教鞭をとっているヴィッキー・ベルという人だった. 曲目はデュリュフレ,ジョン・タヴナーなどの20世紀の曲,黒人霊歌も含む幅広いもので,私の好きなウィリアム・バード,トマス・タリス,パレストリーナなど16世紀の宗教音楽,時代は違うがハインリッヒ・シュッツ,メンデルスゾーンのドイツ語によるプロテスタント音楽他,垂涎のラインナップだった. イギリスのカトリック音楽,国教会の英語による聖歌,宗教改革と反宗教改革,30年戦争,ユダヤ教からの改宗,黒人霊歌と,おぼろげながらメッセージが感じられそうな気がしないでもないプログラムだったが,音楽とカトリック教会の堂内という場を堪能することに専念することにした.
![]() 同じパレストリーナでも最後に歌った「教皇マルチェルスのミサ曲」の「キリエ」と「アニュス・デイ」は少し疲れが出たようで,もう少し練習も必要なように思えたが,何と言っても曲が良いし,音響がまた素晴らしく,「この世の罪を取り除く,神の子羊よ,我らを憐れみ給え」という一節に,思わず自分もミゼレーレ・ノービースと唱えてしまいそうだった. アメリカのアマチュア団体だからというわけではないが,黒人霊歌「スティール・アウェイ」が素晴らしかった.飽きてきたのか,途中から私語をしていたカップルもこの曲のときだけはおとなしくしてくれた.
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祭壇の奥に大きな丸いステンド・グラスがあり,ラテン語で「いとも聖なるイエスのみ心よ,あなたの王国がやって来ますように」(コル・イエースー・サケルティッシムム,アドウェニアト・レグヌム・トゥウム)と書いてあるように見えた.「み心」は「心臓」かも知れないが,間違っていたら容赦して欲しい. ![]()
![]() 下の写真のTシャツは,ラテン語読書会に新しく参加してくれた人が,ギリシア土産として下さったものだ.宮城の勉強会はイングレッソ・リーベロ(入場無料)なので手ぶらで来てもらいたいのだが,折角なのでいただいた.
竪琴を持つホメロスの絵と,「アンドラ・モイ・エンネペ,ムーサ」(かの人を語れ,ムーサよ)で始まる『オデュッセイア』冒頭の詩句が書かれている. 日本から持ってきて,ガエターノ教会へ向かうフィレンツェの街角でデビューとなった.昨日の古本屋に来ていけば,老主人が喜んでくれたかも知れない. お返しはウェルギリウスかダンテの叙事詩の一節をプリントしたTシャツだろうか.まだ発見するにいたっていないが,あったとしても,ウェルギリウスがダンテを案内している絵柄は避けたいところだ.
![]() 音楽にももちろん興味があるが,会場がヴェッキオ橋のたもとにあるサント・ステファノ教会とあるのが目をひいた.この教会ではよくコンサートが開かれるらしいが,その時でなければ中には入れないと聞いている.絶対に行こうと一瞬色めき立ったが,その日のその時間帯は私たちは,ゴルドーニ劇場でバロック・オペラ「ダフネ」を見ている.何事も全てはうまくはいかない.次のチャンスを待とう. |
『竪琴を持つホメロス』とともに サン・ガエターノ教会で |
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