フィレンツェだより
2007年5月20日


 




ボーボリ庭園
「奥方の洞窟」



§文化週間 第8弾 −再びピッティ宮殿−

「文化週間」便乗第8弾は,アカデミア美術館と,昨日見落としてしまった作品のあるサン・マルコ美術館になる予定だったが,前者は例によって長い行列ができていたし,後者は今日は第3日曜日で定休日だった.代わりに選択したのはピッティ宮殿だ.


 ピッティに行く途中で,今まで知識としては知っていたが,発見に至っていなかったものを2つ見つけることができた.1つは,サヴォナローラが絞首刑になった後,火あぶりにされた場所を示すプレートである. 

 サン・マルコ美術館のサヴォナローラの僧房に展示されている,当時の状況を描いた絵から想像して,シニョリーア広場でも,ヴェッキオ宮殿から少し距離を置いた中心に近いところだと思っていたが,実際には宮殿の脇にある噴水の前にあった.

写真:
サヴォナローラ処刑の
場所を示すプレート


 2つ目は,『最新完全版ガイドブック フィレンツェ 日本語』(リヴォルノ,2007)に文章で紹介してある(59頁)ヴェッキオ橋の日時計である.

 1333年の大洪水のモニュメントとして,1345年に作られたものだそうで,実はヴェッキオ橋を通るたびに見ていたものだが,それとは気づかなかった.決め手になったのは,ガイドブックに「刻まれたトカゲ」という記述があったことである.右の写真のカップ型の部分が日時計で,その下の大理石の柱に小さく写っているのがその「トカゲ」である.

写真:
日時計と「トカゲ」


 今日のヴェッキオ橋はそれほどは混んでいなかったので,写真を撮る余裕があったが,まずまずの賑わいであった.写真中央が日時計のある建物で,手前に見えるのはベンヴェヌート・チェッリーニの彫像である.

 チェッリーニは,シニョリーア広場のランツィのロッジアにあるメドゥーサの首を持つペルセウスの彫像の作者で,バルジェッロ美術館に複数の作品がある程の芸術家だ.『自伝』も有名で,邦訳もある.いつも見ているこの彫像がチェッリーニだと私は今日初めて知ったが,妻は気づいていたようである.

写真:
ヴェッキオ橋の風景



ボーボリ庭園
 ピッティ宮殿に着いて,まずボーボリ庭園に行った.フィレンツェの最高気温は30度を越したようだが,日陰は涼しい.三叉の鉾を持ったポセイドンの彫像付きの噴水がある「熊手の泉水」を見ながら,坂を上っていくとフィレンツェの街が見えた.絶景だ.

 一番高いところにある陶器博物館は2回目の訪問だが,今日はロベルト・ファッラーニというガラスと銀細工を使う現代芸術家の特別展示があったし,常設の陶器の展示も,質量ともに再見に耐えるものだった.

 しかし,今日は何と言っても庭(騎士の庭園)が素晴らしかった.満開に咲き誇るシャクヤクとバラを見ると,5月は特別な季節と思わずにはいられない.

写真:
陶器博物館と騎士の庭園


 降る途中,観光ポイントの一つになっているロココ調のカフェハウスの外観もじっくり見た.コピーだそうだが,ガニュメデスの彫像が風景に溶け込んでいた.

 前回見られなかった「奥方の洞窟」(トップの写真)にも行った.「奥方」はコジモ1世の妃トレドのエレオノーラのことだそうだ.


パラティーナ美術館
 今日もパラティーナ美術館では新しい発見があった.ルーベンスの「聖家族」(ジョヴァンニーノもいる),アンドレア・デル・サルトの「サン・ジョヴァンニーノ」や「聖家族」に注目したし,昨日サン・マルコで見たヴィデオに紹介されていたフラ・バルトロメオ(ウフィッツィ収蔵作品にほとんど同じ構図の絵)の作品も確認した.しかし,やはり「椅子の聖母」が素晴らしい.

 帰りにドゥオーモの前を通ったが,先日注目した毛皮を着た2体の彫像は,男女のように見えるので洗礼者ヨハネではないようだ.女性の足元にに蛇がまとわりついているように見えるのでアダムとイヴだろうか.なにせまだ謎のままだ.


インディペンデンツァ広場の「ノミの市」
 寓居の近くのインディペンデンツァ広場に時々「ノミの市」がたつのは,前から気づいていたが,今日初めてひやかすことができた.骨董や家具など面白いものがたくさんあったが,私には露店の古本屋が良かった.今日の最大の掘り出し物は,1972年にトリノで出版された詳注付きのホラティウスの『詩論』だ.

 1970年にやはりトリノで刊行されたイタリア語訳のウェルギリウス『農耕詩』には,ヴァティカン写本の写真が数葉付されており,他にも興味深い挿絵がかなりあって,10ユーロで本日の一番高い買い物だったが,お得感のある本である.

写真:
伊訳,ウェルギリウス『農耕詩』
左頁にヴァティカン写本の写真


 同じ店で,カエサル『ガリア戦記』第7巻(ヴェネツィア,1994)とクセノポン『アナバシス』第1巻(ミラノ,1969)の対訳注解本,BURのシリーズからホラティウス『書簡詩』,散文の『イソップ寓話集』を買った.この店の合計は28ユーロになった.

 別の店で,モンテーニュの全集の端本だが,『イタリア旅行記』(パリ,1946)を買った.7ユーロだったので,本日のお楽しみにかかった費用は合計35ユーロだった.

 フィレンツェ宮城家の「文化週間」は,今日めでたく閉幕した.





モンテーニュの本を買った露店
インディペンデンツァ広場