フィレンツェだより |
塔の町 サン・ジミニャーノ |
§サン・ジミニャーノ
サン・ジミニャーノは,同じトスカーナ州だが,フィレンツェ県ではなくシエナ(シエーナ)県に属している. かつてローマからフランスに向かう街道筋の町として栄え,有力者たちが競うようにして塔を建てたことで知られる.70にものぼったと言われる塔も,今は10数基が目を引くだけだが,それでも中世の城壁に囲まれた「塔の町」というイメージを裏切らない所だった.
![]() 町に近づくにつれて雨はあがり,日も差してきた.丘の上に到着し,車を降りると,素晴らしい眺望が広がっていた.雨に洗われた緑がしっとりと輝き,のどかな景色はどこまでも続くように思えた.
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参事会教会 ドゥオーモ(参事会=コッレジャータ教会)は修復中で,クレーンと覆いでやや雅趣を欠く現状ではあったが,ファサードは小さな町のドゥオーモとしては風格十分で素晴らしいものであった. 堂内にあるサンタ・フィーナ礼拝堂ではギルランダイオのフレスコ画を見ることができた.サンタ・フィーナは15歳で天に召された時,塔にスミレの花が咲いたという町の守護聖女だそうである. フィレンツェのドゥオーモも,もともとは聖女レパラータに捧げられた教会だったそうで,私たちの知らない聖人や聖女がイタリアには溢れている.聖画の題材となるのもキリストや聖母はもとより,聖人たちが多い.カトリックの国ならではだろう. 堂内の内壁はフレスコ画で埋まっていたが,題材は聖書からとられていた.その中で目を引いたのは聖セバスティアヌスの殉教の絵だったが,これはベノッツォ・ゴッツォリ(ゴッツォーリ)の作品ということだ.メディチ・リッカルディ宮殿で見た「東方三博士の礼拝」の作者である. トッレ・グロッサとポポロ宮 ドゥオーモに隣接するポポロ宮(パラッツォ・デル・ポーポロ.英語版のガイドブックにはパラッツォ・コムナーレ「市庁舎」とある)には市立美術館(ムゼーオ)が設置されているが,その前に市内で一番高い塔トッレ・グロッサに登る. 途中から,下が透けて見えるつくりの階段に変わった.高所恐怖症の私が今晩悪夢を見ることは決定的だが,眺望は素晴らしかった.
サン・ジミニャーノは人口や街の規模を考えると,フィレンツェを上回るほどの観光客を集めているが,人がここを訪ねたい気持ちはよくわかる. フィレンツェのような大都市とはまた違う魅力がこの街には溢れている.眼下に広がるトスカーナの平原と,中世そのものの街並みを見ているとそう思わずにはいられない.
![]() 2階にあるかつてダンテが演説したと言う「ダンテの間」にもリッポ・メンミのマエスタがあり,この画家の作品はシエナを中心に幾つか見られるそうだから,14世紀初めには有力な芸術家だったのだろう. チステルナ広場 井戸や雨水の貯水槽をチステルナと言うそうだが,チステルナ広場がこの街の中心である.広場のみやげ物屋で英語版のガイドブックを入手した.貴重な情報源だ. その店には専門店ではないかと思うほど,キティちゃんグッズが溢れていて,しかもよく売れていた.写真を撮ったので披露したいのだが,許可を得ていないので控えることにする. サンタゴスティーノ教会 サン・マッテオ通りを戻って,最初に見た教会,サンタゴスティーノ(聖アウグスティヌス)教会(左下の写真)に着いた.夕方の開いている時間帯になっていたので,今度は拝観することができた.ゴッツォリのフレスコ画が有名で,アウグスティヌスの生涯を描いた壁画が圧巻だったし,その他にも素晴らしい作品があった.
サン・ジミニャーノには他にも由緒ある教会が幾つかあるようだったが,信者にしか開放されていないところもあり,教会が厳粛な祈りの場であることを忘れてはならないだろう. |
町一番の塔 トッレ・グロッサの上で |
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