フィレンツェだより
2007年5月1日


 




ペトライアのヴィラ
本館前のバルコニーから春の風景



§ヴィラ・ペトライア

今日はメーデーで,イタリアでは国民の休日である.先日のポッジョ・ア・カイアーノに続き,メディチ家のヴィラがあったペトライアに連れて行っていただいた.


 ヴィラ・ペトライアはフィレンツェ市街から北へ3.5キロほどの場所にある.以前ブルネレスキ家の館であったものを,1575年,枢機卿だったフェルディナンド・デ・メディチが入手したとのことだ.

 この人物はトスカーナ大公フランチェスコ1世の弟で,兄の死後に公位を継承する.したがって,私たちが良く知っている15世紀のメディチ家の人物,老コジモや豪華王ロレンツォはこのヴィラには関係していない.

写真:
時計台のあるヴィラ本館


 ボーボリ庭園にも関わったベルナルド・ブオンタレンティが庭園を整備したのとことだが,そのなごりは今でも残っているのだろうか.

 現在のヴィラは,19世紀末にイタリア国王となったヴィットリオ・エマヌエレ2世の趣味がかなり反映しているものらしい.本館には豪華な調度や絵画,彫刻があったが,バルトロメオ・アンマンナーティの「ヘラクレスとアンタイオス」のブロンズ像が目をひいた.

 本館脇の庭園にある水浴びする乙女の像のオリジナルが館内にあったが,リーフレットの情報によれば,寓意化されたフィレンツェの姿で,ジャンボローニャの作品らしい.

写真:
本館を横から見る
手前に水浴びする乙女の像


 邸内に古いピアノがあった.先日のポッジョ・ア・カイアーノにはコンサート・ホールがあったし,アカデミア美術館には,トスカーナ大公家の楽器コレクションもあるので,メディチ家にせよ,ロレーナ家(ロートリンゲン家)にせよ,トスカーナ大公家は音楽を愛好していたらしい.

 立派なビリヤードの台があり,建物の正面に時計台があるのもポッジョ・ア・カイアーノと同様で,内部にも時計が多くあり,時計がめずらしかった時代を反映しているようにも思える.

 かなりの数あった中国絵画は魅力的とは思えなかった.中国にはもっと良いものがあるだろうにと思わないではいられない.東洋趣味に憧れる時代があったことを反映してるのだろうか.

写真:
ヴィラからフィレンツェ
市街を眺める


 館内に入ってすぐのところで,庭園を紹介するヴィデオを上映していた.大勢がいかに手間隙をかけて庭園の植物を手入れしているかが良くわかる.もちろん,繊細な日本の庭園とは赴きを異にしており,それにくらべると大雑把な感じは免れないが,大胆で豪快だということかも知れない.

 池には鯉や小さな魚がいて,縁の煉瓦にはカナヘビがいる.鳥がさえずりながら木々の間を飛びかい,猫が悠然と歩いていく.生き物を見ると心が和む.

 人工的なものであっても植物が多いということは,動物にとっては快適な環境なのだろう.私たちも花や木々を見ることができて嬉しかった.

写真:
庭園はシンメトリカルなデザイン


 他のヴィラと一緒に説明のあるリーフレットが置いてあったが,英語版,イタリア語版はなくなっていて,たくさん余っていたフランス語版とドイツ語版をもらってきた.

 空港も近くにあり,郊外がだいぶ開発されてしまったとはいえ,フィレンツェ周辺の平原を見渡すことができて大変良かった.ドゥオーモも見えた.





ペトライアからズームで撮影
ドゥオーモのクーポラが霞んで見える