フィレンツェだより |
蔬菜園芸庭園 (ジャルディーノ・デッラ・オルティクルトゥーラ) |
§花の市
私たちは長期滞在といっても一年だけだが,在留届けを出すのは国民の義務ということなので,届けを出させてもらった.幸いなことに寓居の近くだったので,すぐに済ますことができた. ![]() ムーティが最初にロストロポーヴィチを悼むスピーチをして,全員起立して黙祷した後,演奏が始まった.舞台は遠かったが,音は良く聞こえたし,何よりも音楽が良かった. ムーティはミラノ・スカラ座に移籍する前にフィレンツェ歌劇場に長くいたそうなので,指揮者,楽団,聴衆の間に連帯感のようなものが感じられ,人気が高いようだ. 私はグルックが好きだ.ギリシア神話や悲劇を原作とするオペラを幾つか書いた人なので,授業でも映像を使わせもらうこともある.だが,普通に考えて,モーツァルトやベートーヴェンよりグルックの方が世間に知られているということはまずないだろう. それでも,このすばらしい音楽が聴けるのだから,クラシック音楽の世界は広くて深いなあ,と,何にでも簡単に恐れ入ってしまう私はつくづく思う. 蔬菜園芸庭園 翌29日は日曜で,少なくとも私たちの寓居のあたりは静まり返ったようになっていた. 午後,エッセルンガまで買出しに出かけたが,いつものサンガッロ通りを歩いていても,ほとんど人や車を見ない.さすがにリベルタ広場まで行くと,車は走っていたが,それでも普段とは比較にならない交通量だった. この日は少し寄り道をした.4月25日から5月1日まで,リベルタ広場の近くの「蔬菜園芸庭園」で花と植物の市があると教えていただき,街角で配られるフリーペーパーでも広告を見て,のぞいてみる気になった. リベルタ広場の近くなら,エッセルンガに行きがてら寄れるだろうと,水曜日の買い物の時に一回足を伸ばしたのだが,場所をしっかり確認して行かなかったので,通りを間違えたらしく行き着けなかった. 今回は地図で場所を確認して出かけたので,無事に行き着くことができた. 庭園は思っていたよりずっと広かった.色鮮やかな鉢をぎっしりと並べたテントが並んでいて,通りに人影もまばらな日曜日であるにもかかわらず,そこだけは大変賑わいを見せていた. 日本の紫蘇を「バジーリコ・ジャッポネーゼ」というらしいこともわかり,日本の盆栽などの展示会の広告も出ていたりしておもしろかった.花や木,植物は私たちの心を和ませてくれる. 庭園に生えている樹木も興味深かったし,すぐ近くを鉄道が通っていて,時々列車が通過するのが面白かった.それに繁華街ではないが,都会の住宅地の中にあるので,あたりの風景が興味をひいたが,日差しが強すぎて,思ったような写真はあまり撮れなかった.
![]() 4月に入って曇りの日もほとんどなく,気温もあがっていくばかりだが,それでも乾燥した気候のせいか日陰は涼しい.室内にいると快適で,ともかく仕事ははかどる. しかし,この日差しの強さ,この気候に私たちは憧れるわけだが,生身の体の目は大事にしなければいけない.イタリアに来る人はサングラスは忘れないようにした方が良いと思う. それにしても,この間まで裸だった街路樹までも一斉に緑の衣を纏い始めている.緑の色も一気に濃くなる勢いだ.雨も降らないのに,どこにその力を蓄えていたのだろうと不思議に思うが,地下水や遠いアルプスの雪解け水のおかげなのだろうか. 知識としては知っていても,雨がほとんど降らず,日差しの強い(しかも日陰は涼しい),洗濯物がよく乾く天候は,私たちが経験したことのないものなので,貴重な体験だと思っている.ついこの間まで寒い,寒いとふるえていたのに,これからの暑さを心配し始めている今日この頃である.
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Mostra di Bonsai e Suiseki(盆栽と水石の展示会)という広告が蔬菜園芸庭園の入口に貼ってあった.「水石」という語を私は知らなかったが,広辞苑で確認した. |
蔬菜園芸庭園 温室の前で |
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