フィレンツェだより
2007年4月21日



 




ウフィッツィ美術館の中庭
奥にヴェッキオ宮殿とドゥオーモ



§ウフィッツィ初体験

ついにウフィッツィ美術館(ウッフィーツィが正しい発音に近いかも知れないが日本語版公式ガイドブックにウフィッツィとあるので,それに従う)に行くことができた.


 6時半に起きて,顔を洗って歯を磨いただけで,7時には寓居を出発し,道を急いだ.7時半前には並んだが,前には30人くらいしかいなかったので,8時15分の開場まで余裕のある気持ちで待った.

 8時過ぎくらいから予約のあるグループが前方に集まり始め,結局入れたのは8時半だったが,予約のない列の最初のグループだった.

 1階でチケット(一人6.5ユーロ)を買って,3階の展示場まで階段を昇る.

 まずボッティチェルリの「ヴィーナスの誕生」と「」を見た方が良いかなとも思ったが,ものには順番というものがある.実際,直接その部屋には行けないようになっているので,良さそうな作品をチェックしながら見ていくと,ボッティチェルリの作品を置いた部屋にたどりついた.

 「ヴィーナスの誕生」も「春」も素晴らしい絵で,後者は特に見れば見るほど味わいがでるように思えた.30年位前に学生の頃,上野の西洋美術館に来た「パラスとケンタウロス」が私には良いように思えた.宗教的主題でない作品はどれもアレゴリカルな意味合いがあるのだろうが,詳しいことはわからないので,今日はやはり良い絵なのだと思っただけだった.

 時間帯が良かったのか,どんな有名な作品も,ガイド付きのグループをやり過ごすと前に誰もいない状態が現出し,ボッティチェルリの作品も間近でよく見ることができた.個人的には他に好きな作品がたくさんあったが,ウフィッツィのイメージを作っているのは良くも悪くもボッティチェルリなのだと思う.

 ジョットの聖母子(「オンニサンティの聖母」),フラ・アンジェリコの聖母戴冠,フィリッポ・リッピの作品群(「聖母戴冠」が傑作),その他にも大傑作が数多くあり,とても一回では見切れない.

 ダヴィンチの「受胎告知」は日本に出張中だし,修復中(ラファエッロの「ヒワの聖母」),建物の修理に伴う展示並べ替え(ルーベンスやレンブラントの作品)などの事情で見られないものがあったが,私たちが見過ごしたものも少なくない.これから何度も通うことになるだろう.

奇を衒って言っていると思われるかも知れないが,私自身は「ニオベの部屋」という展示室で,先日のミケランジェロ・ショックのような感動を味わった.


 子沢山を自慢したばかりに神の怒りを買って子供たちを殺されて,悲しみのあまり岩になってしまったというギリシア神話に基づく古代彫刻群を展示した部屋である.末の女の子をかばいながら悲しみにくれているニオベの像が圧倒的だった.

 オリジナルなのか,古代に作られたコピーなのかも知らないが,素晴らしいとしか言いようのないものだ.後で買ったガイドブックにも詳しい説明はなかったので,少し調べてみようと思う.

 廊下には古代彫刻が多く飾られていて,ローマ皇帝たちの胸像とともに,キケロや伝セネカの胸像もあり,カルネアデスという古代の哲学者の像が印象に残った.

写真:
ヴェッキオ橋とヴァザーリの回廊

ウフィッツィは撮影禁止だが,廊下から窓外を撮影することはできる.


 3階の鑑賞が一通り終わって,バールでコーヒーを飲んで,ピザを妻と分け合い,遅い朝食とした.テラスからヴェッキオ宮殿が,すごい迫力の姿で見えたが,写真には収まりきらない.

写真:
バールのあるテラスにて
奥にドゥオーモ,右端にヴェッキオ宮殿


 その後,2階におりてカラヴァッジョやその影響を受けた人たちの絵を見た.東京の庭園美術館でカラヴァッジョ展を見たときは,カラヴァッジョは良かったが,その影響をうけた人たちの絵はあまり良いとは思えなかったが,今回は良い作品を幾つか見ることができたと思う.



 へとへとになって1時過ぎに出たが,入場待ちの長蛇の列はできていなかった.土曜日のせいなのかどうかはまだわからないが,ウフィッツィもいつも数時間の行列を覚悟しなければいけないというわけではないらしい.観光客が少ないかと言えば,シニョリーア広場や,ヴェッキオ橋はたくさんの人であふれていたし,現にウフィッツィのすぐ前のランツィの開廊は大勢の観光客で賑わっていた.

写真:
観光客で賑わう
ランツィの開廊


 いずれにせよ,初めてのウフィッツィ,やっと一仕事をおえた満足感で家路についた.





本日のドゥオーモ
シニョリーア広場から