フィレンツェだより番外篇
2014年3月31日



 




床モザイク(4世紀)に描かれた海の生物たち
サンタ・マリーア・アッスンタ聖堂 アクイレイア



§北イタリアの旅 - その1

多少,気恥ずかしくなるような名称だが,「アドリア海美術紀行」と言う,旅行会社企画の旅(以下,ツァー)に参加し,以下の都市を観光して来た.


 副題が「古都と名画とロマネスクを訪ねる」と言うものであったが,ロマネスク以前の古代末期,中世初期の遺産も予定に含まれていたし,「アドリア海」からだいぶ離れた内陸の都市もまわったので,「ロマネスク」,「アドリア海」と言うような,はっきりとした一語で,簡潔に要約することの難しい旅だったように思う.

 この旅行に参加した主たる動機は,

 1.セネカの悲劇の重要写本をかつて架蔵していたポンポーザ修道院を拝観すること
 2.生地カステルフランコ・ヴェネトの大聖堂でジョルジョーネ作の祭壇画を鑑賞すること

の2つだったが,それ以外にも心打たれる芸術作品や風景を見る貴重な機会となった.

 旅行会社からもらった旅程に,それ以外に団体で観光した場所を加え,教会や美術館の訳名を多少変更して整理すると,以下のようになる.

1日目 (3月17日)
 成田発→ミュンヘン乗り換え→トリエステ着→
  バスで移動してグラード泊
 
 2日目 (3月18日)
 以下,名称がバジリカの場合は「聖堂」,キエーザの場合は「教会」,カテドラーレまたはドゥオーモは「大聖堂」とする

 グラード(右写真)
  サンテウフェミア聖堂
  洗礼堂
  サンタ・マリーア・デッレ・グラーツィエ聖堂
 アクィレイア
  ローマ時代の考古学遺跡
  サンタ・マリーア・アッスンタ聖堂
 グラード泊
 3日目 (3月19日)
  チヴィダーレ・デル・フリウリ(以下,チヴィダーレ:右写真)
  ロンゴバルドの小神殿
   (サンタ・マリーア・イン・ヴァッレ修道院の祈祷堂)
  サンタ・マリーア・アッスンタ大聖堂
  大聖堂付属キリスト教博物館
 ウーディネ
  カステッロ(城)の丘 / 城門に通じる坂道の回廊
  時計塔のあるサン・ジョヴァンニ開廊
  リオネッロの開廊
  サンタ・マリーア・アヌンツィアータ大聖堂
 ウーディネ泊
 4日目 (3月20日)
  マゼール(右写真)
  ヴィッラ・バルバロ
  テンピエット
 カステルフランコ・ヴェネト(以下,カステルフランコ)
  サンタ・マリーア・アッスンタ・エ・サン・リベラーレ大聖堂
  「ジョルジョーネの家」博物館

 ヴィチェンツァ泊
 5日目 (3月21日)
  ヴィチェンツァ(右写真)
  テアトロ・オリンピコ
  キエリカーティ絵画館
  サンタ・コローナ教会
  サンタ・マリーア・アヌンチャータ大聖堂
    (通常のAnnunziataではなくAnnunciataとある)
  シニョーリ広場
  複数あるパッラーディオ設計の建造物の外観

 ヴェネツィア泊
 6日目 (3月22日)
  ヴェネツィア(右写真)
  カ・ドーロ(フランケッティ美術館)
  サン・ザッカーリア教会
  アカデミア美術館
  自由時間(後述)

 ヴェネツィア泊
 7日目 (3月23日)
 パドヴァ
  スクロヴェーニ礼拝堂
  エレミターニ教会
 キオッジャ(右写真)
  街路散歩(教会などの外観)
 ポンポーザ
  旧ベネディクト会修道院と教会

 ラヴェンナ泊
 8日目 (3月24日)
  ラヴェンナ
  サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂
  ガッラ・プラチーディア霊廟
  サンタポリナーレ・ヌォーヴォ聖堂
  オルトドッシ(ネアニアーノ)洗礼堂
  自由時間(後述)

 ラヴェンナ泊
 9日目 (3月25日,26日)
  ボローニャ(右写真)
  サン・ペトロニオ聖堂
  サント・ステーファノ教会群
 モデナ
  サンタ・マリーア・アッスンタ・エ・サン・ジェミニアーノ大聖堂

 モデナ泊

 翌日,ボローニャ→ミュンヘンから帰国


 多少あった自由時間で,土地勘が全くないヴィチェンツァでは,再集合の場所シニョーリ広場近くのサンタ・マリーア・イン・フォーロ・デイ・セルヴィ教会を拝観した他,それぞれ2度目,3度目のヴェネツィアとラヴェンナでは,地図を見ながら歩いて,自由時間を多少有効に活用できた.

 キオッジャで少しだけあった自由時間は,カルパッチョの祭壇画があると聞いたサン・ドメニコ教会に急いだが,開いていなかった.

 ヴェネツィアには夕方のまだ早い時間に到着したので,リアルト橋の近くの宿からサン・マルコ広場の前の道に出て西進し,以前から見たいと思っていたスクオーラ・ダルマータ・サン・ジョルジョ・デリ・スキアヴォーニ(以下,サン・ジョルジョ同信会)のカルパッチョの連作絵画を観た後,翌日拝観予定のサン・ザッカーリア教会を下見し,途中にあった「ヴェネツィアの斜塔」という通称を持つらしい(今の所,添乗員のYmさんからいただいた手作りの「VENEZIA散策MAP」に「ベニスの斜塔」とあるのと,複数の日本語ブログしか典拠がない)鐘楼があったサン・ジョルジョ・デイ・グレーチ教会を拝観した.

 翌日の午後の自由時間は,アカデミア美術館内で解散した後,同美術館でたまたま開催されていたカルロ・サラチェーニの特別展を観て,さらに有名作品を再鑑賞した後,サン・バルナバ教会,スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコ(以下,サン・ロッコ同信会),サン・ロッコ教会,サンタ・マリーア・グローリオーサ・デイ・フラーリ聖堂(以下,フラーリ聖堂),サン・トマ教会,サン・ポーロ教会,サン・シルヴェストロ教会,サン・サルヴァドール教会をまわった.

 このうち,拝観できたのは,サン・ロッコ同信会,サン・ロッコ教会,フラーリ聖堂,サン・ポーロ教会,サン・サルヴァドール教会だけで,後は扉が閉まっていて,外観のみの見学となった.拝観できた同信会,教会では,それぞれ,素晴らしい芸術に出会え,感銘を得たので,これらに関しては別の回に報告する.

 ラヴェンナでも,前回までに見られなかった「石の絨毯の館」博物館(古代後期の屋敷跡から発掘された床モザイク)を見た後,前回,おそらく修復中で,モザイクで有名なサンタンドレーア礼拝堂は見ていないが,やはり有名な「象牙の司教座」は見た,大聖堂博物館を再訪し,今回はサンタンドレーア礼拝堂のモザイクをしっかり観ることができた.また,大聖堂で前回見逃したグイド・レーニ作の祭壇画も確認した.これらについても,別の回で感想を述べる.

 今回観ることができたものは,おおよそ,時代別にまとめると,

 古代:アクイレイアの古代遺跡
 古代末期:グラード,アクイレイア,ラヴェンナのモザイク
 中世初期:チヴィダーレのロンゴバルド小神殿
 ロマネスク/ゴシック/ルネサンス:教会建築と,彫刻,絵画

に整理できるであろう.教会は一つの教会でも様々な時代の様式が混在しており,ロマネスクならロマネスク,ゴシックならゴシックと明確に言い切ることはできないことが多い.当然,マニエリスムやバロック,それ以後の芸術も幾分かは見ているが,今回はそれらには,特に必要な場合以外には,殆んど言及しない.






鐘楼の下に,発掘されたクリプタのモザイク
アクイレイア