フィレンツェだより |
チョコレート市で買ったジンジャーのチョコレート 大人の味です |
§甘い香り,熱い思い
広場には甘い香がたちこめていた.イタリア国内外から出店があるようで,色々なタイプのチョコレート菓子・飲料を売るテントが並んでいる.私たちも楽しみながら一周した. 折角なので記念に少しだけ買うことにした.雰囲気を見定めて,いかにも職人らしいおじさんとお兄さんが売っている店でジンジャーの砂糖漬けにチョコレートをかけたお菓子(トップの写真)を買った.包装紙を見ると,トリノから来た店だった.それを齧りながら,恒例の土曜日のペルゴラ劇場コンサートへと向かった.
ペルゴラ劇場コンサート この日は,アンジェラ・ヒューイットのピアノ・リサイタルで,バッハ「平均律クラヴィーア曲集」第2巻「プレリュードとフーガ」13番から24番,「フランス組曲」第5番ト長調というプログラムだった. 前半の平均律は鬼神をも唸らせる迫力で,聴いているのがしんどかったが,文句の付けようのない立派な演奏に思えた.前半と言っても,1時間20分を越える演奏だったと思う.休憩の後の後半は短かったが,聴きやすい曲なので,前半の疲労と緊張を心地よく解きほぐしてくれた.選曲も成功していると思う.
ペルゴラ劇場のパンフレットに使用されている写真は,日本で紹介される時と同じものだったので,おそらく若い頃のものだと思った.それでも人の良さげな中年女性といった風に写っているので,実物はあるいはもう少し,お年を召して見えるのかと思っていたところ,実際に舞台に現れたのは,遠くの席だったので顔まではわからないものの,第1次大戦後の豊かになったアメリカ女性のようなエレガントな衣装をまとい,豊かな髪を古風にセットした長身の女神のような容姿の女性だったので,これはこれで驚いた. 姿は颯爽としていたが,演奏は繊細でロマンティックだった.ただ,前半は大曲を大曲として弾いていたので,私には少々しんどかった.
![]() CDで「ゴルトベルク変奏曲」を何枚持っているか数えてみたところ,リヒターやレオンハルトなど複数持っているものを含めて27枚.ピアノ演奏では,グールドの海賊版ではないライヴ録音を含めて3枚,ニコラーエワが3枚,熊本マリ,園田高弘,リフシッツ,シェプキンといったところだが,ちゃんと聴いたのはグールドとニコラーエワだけだ. 「平均律」は,キース・ジャレットが1巻はピアノで弾いていたが,2巻はチェンバロで弾いたものを持っている.ピアノで弾いた全曲演奏はリヒテルとグールドしか持っていない.ニコラーエワは2巻だけ,ホルショフスキーは1巻だけで,特に後者は演奏もすばらしいと,少なくとも私は思う.「フランス組曲」の全曲盤ピアノ演奏はニコラーエワとグールドしか持っていない. いずれにせよ,私がクラシック音楽を好きになったのが遅いこともあるが,私の世代はすでにバッハのクラヴィーア曲をピアノで聴くというのは一般的ではないように思う.
![]() そこでピアノのバッハが鳴っていて,「お,これは良いなあ」と思った.演奏は,一時の熱狂が一段落してだいぶ時間が経ったブーニンだった.それ以来,食わず嫌いは損だと思ってブーニンのCDを聴くようになった.結局バッハ演奏のCDは随分後になってから買ったが,今は茅屋の棚で眠っている. ![]() 彼女がCDを出しているハイペリオンは,私の好きなルネサンス・バロックの音楽をよく録音しているので,ヘンリー・パーセルなどのイギリス音楽や,ヨーロッパ各国の宗教音楽のCDをかなり持っているにもかかわらず,ヒューイットのCDを私は1枚も持っていなかったし,実はどういう演奏家かもよく知らなかった.これで少なくとも,日本に帰ったら,お茶の水のディスクユニオンに行って,すぐに買い求めるアイテムのリストに載ったことは間違いない.
![]() 昨日は,今日の聴衆は本当にバッハが好きなのだなあと思わずにはいられなかった.他の日には感じられなかったが,昨日はあきらかにアンコールを期待し,要求していた.ピアニストはその期待に応えて,小曲を3回弾いた.3曲目は「ゴルトベルク変奏曲」の主題だったが,これでアンコールも終わりという暗示だったかも知れない.
終了後,立ち上がって賞賛する人も少なくなかった.ヒューイットの固定したファン層がいるのかもしれない. 年明け前は,全て平土間(プラテア)で聴き,それでも場所によって見える風景が違って楽しめたが,年が明けてからは,少し安いので,節約の意味もあって階上ボックス席(パルコ)を選択している. 前回は定員4人ほどのボックス(パルコ)で2人で聴けたし,今回はパルコ・チェントラーレが割り当てられた.これを例えば「中央ボックス席」と訳すのは正確ではないだろう.舞台正面の,2階と3階を一つにした大きなパルコで,多分昔はトスカーナ大公の席であったと思われる場所だ. 今は階段状に25人ほどの座席があり,決して広々というわけにはいかないが,舞台は良く見えるし,音も悪くない.大変居心地の良い席だった.2列目の右端だったので,大公ではなく,お付きの人か衛兵が立っていた場所あたりか.雰囲気は十分だった.
![]() ショーウィンドウが春物へと模様替えが進むサルディの巷で,良い品物をバーゲンで買ったと言ったら喜んでくれそうな親族向けのお土産を購入して,ようやく成果をあげることができた. |
101匹チョコレート これが齧られる !? |
![]() ![]() ![]() |