フィレンツェだより |
日除けのある両替店 ネーリ通り |
§世界株安
出国の際,日本で換えるよりも現地で換えたほうが有利という情報を耳にして,半分はユーロで,半分は日本円で持ってきていたが,そもそもフィレンツェは観光地だし,何しろこのところずっとユーロ高で,日本で換えた時よりかなり不利な交換レートが続いていて,できれば交換しないで過ごせればと思っていた. しかし,3月の帰国を前に次々と旅行計画がまとまり,帰国するまでのキャッシュフローを検討すると,現金が不足することは明らかだった.腹を括って,不利なレートを承知の上で両替を決断した. そう決意したところに,世界同時株安がやってきた.昨日,街を歩いていたら,両替所のレート表示が久しぶりに170円を割り込んでいた.続落も予想されないではなかったが,欲をかかずに,このあたりで少し換金することにした.
![]() ネーリ通りに着くと,店先に「手数料無し 1万円61ユーロ」と日本語の掲示がある店があり,ここがその両替商だろうかと見ていたら,中から人が出てきて,片言の日本語で話しかけてきた.昨日から170円を切っている街の大手の交換レートが,今日は1ユーロ166円から167円である.1万円61ユーロなら164円弱のレートとなり,しかも手数料無しなら,まあ他よりも有利だろうと思って,そこで両替することにした. 後ろにアメリカ人とおぼしき人が並んでおられた.100ドル65ユーロ手数料無しという貼紙もある.ドルとユーロの街の交換レートは注意していなかったので,良いのかどうかわからないが,ここ数日ユーロともに円に対して値を下げているドルなので,最近ということではなく,この店はドルの国から来た人にも,街の一般的な両替店よりは有利なのかなと推測した. 手持ちのユーロが不足して,日本円を取り崩したわけだから,そういう意味では特に喜ぶべきことではないのだが,必要なときに,少しでも有利に換えられたので嬉しかった. ユーロは今後まだ下がる気配だが,街の交換率が1ユーロ179円まで行き,VISAカードの交換レートが大体165円前後で推移していることを考えれば,観光地フィレンツェで,このレートならまずまずだと思う. サン・ピエール・スケラッジョ教会跡の写真展 ついでに良いこともあった.その店に行くためにウフィッツィの傍を通ったら,サン・ピエール・スケラッジョ教会跡が開いていて,「労働・社会保障省」肝煎りの無料の写真展が開催されていた. 写真展より,デル・カスターニョとボッティチェルリの剥離フレスコ画に関心があったのが正直な所だが,本来の写真展もしっかり見た. 働く人たちの仕事上の安全と健康がテーマだったようだが,1910年代の写真を見ていると,まがりなりにも統一国家をつくり,後発の帝国主義大国になりつつあったイタリアでも,貧困の問題が多分相当に深刻だったのだろうという感想を持った.この事情は日本も同じだと思う. 1960年代の日本の映像を見ると,現代の若者たちは別の開発途上国の映像だと思うと言われて久しいが,60年代を経験している私たちでも,今日見た写真の中には衝撃的なものもあった. この特別展の趣旨にはずれた感想になるとは思うが,20世紀にいかに人類が大きな歴史的転換を迎えたか,それでもなお,世界各地を見渡せば,貧困の問題があちこちに残っているかを考えさせられた.通貨の変動や,燃料事情の急変があれば,貧困は他人事ではない.
マルテッリ書店 帰りに福山さん情報で「専門書コーナーが充実している」というマルテッリ書店に寄ってみた.古典文学のコーナーがあり,今まで見た中では一番大きかった. 新刊書店だけに,現代風の装丁の廉価普及版が中心なので,ほとんどは日本からも買える本だとは思ったが,セネカの悲劇『トロイアの女たち』(1999年),『フェニキアの女たち』(1997年),同散文作品『賢者の恒心について/閑暇について』(2001年)のBURのシリーズ(ミラノ),それから詳細な注釈のついたセネカの悲劇『メデア』(ピサ,2003年),やはり詳注版のクラウディアヌスの『エウトロピウス論難』(ミラノ,2004年)を購入した.
研究テーマや翻訳の仕事に関係が深い本は,悔いが残らないように,出会った時に買うことにしている.計59.27ユーロだった. |
満月 寓居の窓から |
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