フィレンツェだより |
ミケランジェロ 未完のピエタ |
§ドゥオーモ付属美術館
これを読んで質問せよと言われたというコピーを見せてもらったら,カルヴィーノの文章を簡単に書き換えたものらしく,それなりに味のある文章に思えたので,私もこれで勉強させてもらうことにした. 30年前に妻と同じクラスでフランス語を学んだ時のテクストに,『星の王子様』を分りやすく書き換えたものがあったが,そういう文章は意外に忘れないので,先生はけっこうポイントをついているのではないかと思った. でも,スペイン人も日本人も先生も三すくみで,今は少し気まずい雰囲気かもしれない.是非,みんなで乗り越えられることを祈っている. 岡目八目で何でも言えるが,全くの初心者であることを考えれば,彼女のイタリア語はいい線行っていると思う.問題は,少しは勉強したのにできない私の方だ.イタリア語の勉強はもちろん大事だが,授業担当を免除されている今年は,研究と執筆が私の仕事なので,そちらに重心をおいて,私なりにがんばった.
![]() 結論から言うと,今日もとんでもないものをたくさん見た. 付属美術館にミケランジェロの未完のピエタがあることは知っていたし,実際には失念していたが,ドナテッロの「マグダラのマリア」や,サン・ジョヴァンニ洗礼堂のギベルティ作「天国の門」のオリジナルのパネルがあることも知識として知っていたが,それらだけではなく,見せてくれるものの殆どが素晴らしかった. オルランドゥス・ラッススやジョスカン・デ・プレのLPジャケットの表紙に使われていた浮き彫り(ルーカ・デッラ・ロッビア作)の実物を見ることができたし,ドナテッロの作もまじる聖人や預言者の像が素晴らしく,東大寺や興福寺の仏像群を見るような感銘を覚えた.
![]() ミケランジェロは,イエスの遺体を後ろから抱えているニコデモかも知れない人物に自己投影して,このピエタを作った.未完になってしまったが思い入れの深い作品であっただろう. あやうく見過ごすところだったが,ドナテッロの「マグダラのマリア」も,やはりすごいものだった.
![]() アカデミア美術館その他でもよく見られるベルナルド・ダッディの他に,ジョヴァンニ・デル・ビオンド,ロレンツォ・ディ・ビッチなど力のある画家の作品が,数多くはないが,十分堪能できた. ![]() もちろん,ミケンランジェロがいなかったとしても,それ以前の彫刻家たちの価値は減じるものではない.彼らは彼らで素晴らしい. ルーカ・デッラ・ロッビアが作ったパネルの中に,「プラトンとアリストテレス」を描いたものがあった.落ちこぼれたが哲学科出身なので記念写真に収まった.
古代エジプトの王のような姿をした教皇ボニファティウス8世の像を作ったアルノルフォ・カンビオという名前は初めて聞いたし,ドナテッロの作品でも初めて知ったものが幾つかあった. 下の写真は4人の福音史家で,左から2番目がドナテッロの福音史家ヨハネだが,この右隣の聖マタイが心打たれる造形だった.作者のベルナルド・チュッファーニという人の名前も初めて聞いた.
専門に勉強している人はもとより,中世からルネサンスのイタリア美術の関心のある人にはあたりまえのことなのだろうが,まったく予備知識のない人間が,さほど期待もせずに,ふらりとやってきて,たちまちに魅了されてしまう.ドゥオーモ付属美術館,おそるべし,である. ブックショップで,今日は日本語版のガイドブックもあるにはあったが,できが今ひとつに思えたので,情報満載の英語版を買った.図版豊富で素晴らしいが,どうしても掲載写真がきれいになりすぎているきらいはある.しかし,実物ではよく見えなかった細かい所も見られて,やはり買って良かった.12ユーロ. 体力も気力も残っていなかったので,クーポラに登るのはまたの機会ということにして帰宅した.
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本日のドゥオーモ 快晴 |
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