『ガリア戦記』(1.5.1)

(テクスト)

(1.5.1) Post eiius mortem nihilo minus Helvetii id, quod constituerant facere conantur ut e finibus suis exeant.

(読み)

(1.5.1)スト・ーユス・ルテム・ヌス・ヘルウーティイー・ド,クド・コンスティトエラント・フケレ・コーントゥル・ト・ー・フーニブス・イース・クセアント.

(語彙)

(1.5.1)

 post:対格支配の前置詞「〜の後(に,で)」
 eius:3人称の人称代名詞の代わりに使われる指示代名詞is, ea, id「それ,その」の三性共通(ここではオルゲトリクスを受けるので男性)の単数・属格
 mortem:第3変化・女性名詞mors, mortis, f.「死」の単数・対格
 nihilo:副詞「全然〜ではなく」
 minus:第1・第2変化形容詞paerv-us, -a, -um「小さい」の比較級minor, minus「より小さい」の中性・単数・対格が副詞化し「より少なく」.nihilo minusで「前より少なくなく,前と同様に,前にもまして一層」
 Helvetii:複数で用いられる第2変化・男性名詞(元来は形容詞)Helveti-i, -orum, m.pl.「ヘルウェティイー(ヘルウェーティイー)族の複数・主格
 id:指示代名詞is, ea, id「それ,その」の中性・単数・対格.ここでは関係代名詞の先行詞となり,「関係代名詞以下のような,そのこと」
 quod:関係代名詞qui, quae, quodの中性・単数・対格
 constituerant:第3活用第1形動詞constituo, constituere, constitui, constitutum「決定する,決心する」の直説法・能動相・完了・3人称・複数.主動詞の直説法・現在(ただし歴史的現在で「過去」の意味)に対して「以前」を意味する「大過去」として使われている
 facere:第3活用第2形動詞facio, facere, feci, factum「する,なす,作る」の不定法・能動相・現在
 conantur:第1活用の形式受動相動詞con-or, -ari, -atus sum「(不定法を取って)〜しようとする,試みる,努力する」
 ut:関係詞節で説明されたことをもう一度説明する目的文を導く接続詞
 e:奪格支配の前置詞「〜から(内→外)」
 finibus:第3変化・男性名詞fin-is, -is, m.「終わり,限界,(複数で)境界,領域」の複数・奪格
 suis:再帰代名詞の所有形容詞su-us, -a, -um「(主語と同じ)自分自身の」の男性・複数・奪格
 exeant:不規則動詞exeo, exire, exivi, exitum「出る,出て行く」の接続法・能動相・現在・3人称・複数

(試訳)

 (1.5.1) オルゲトリクスの死後も,ヘルウェティイー族は決定していた事,(すなわち)自国領土を出て行くことを以前にもまして試みた.