『ガリア戦記』(1.2.4) |
(テクスト) (1.2.4) His rebus fiebat ut et minus late vagarentur et minus facile finitimis bellum inferre possent; qua ex parte homines bellandi cupidi magno dolore adficiebantur. |
(読み) ヒース・レーブス・フィーエーバト・ウト・エト・ミヌス・ラーテー・ウァガーレントゥル・エト・ミヌス・ファキレ・フィーニティミース・ベッルム・インフェッレ・ポッセント・クァー・エクス・パルテ・ホミネース・ベッランディー・クピディー・マグノー・ドローレ・アドフィキエーバントゥル. |
(語彙) (1.2.4)(コロン,セミコロンで文を区切る) 第1文 his:指示代名詞hic, haec, hoc「これ,この」の女性・複数・奪格 rebus:第5変化・女性名詞res, rei, f.「もの,こと,事情」の複数・奪格 fiebat:facioの受動形として使われる不規則動詞fio, fieri, factus sum「成る,(結果として)〜ということになる」の直説法・能動相・未完了過去・3人称・単数.非人称的に考えるか,ut以下の節を主語と考えるか.英語のit happened that と同じなら,まあ前者か ut:動詞が接続法になる従属文を導く接続詞.通常は目的や結果を意味する et:接続詞「〜と,そして」 minus:第1・第2変化形容詞parv-us, -a, -um「小さな,少ない」の比較級,minor, minus「より小さい,より少ない」の中性・単数・対格で,副詞の比較級「より少なく」の意味(英語のless)になる late:副詞「広く,広い範囲で」 vagarentur:第1活用の形式受動相動詞vagor, vagari, vagatus sum「さまよう,さすらう,行き来する」の接続法・受動相(意味は能動)・未完了過去.主動詞が副時称(過去時称)なので,接続法・未完了過去は主動詞に対して,「同時」または「以後」を表す et:接続詞「〜と,そして」 facile:第1・第2変化形容詞facil-is, -e「容易な,簡単な」の中性・単数・対格で,副詞「容易に,簡単に」の意味で使われる(中性・対格は副詞化する) finitimis:第1・第2変化形容詞finitim-us, -a, -um「隣接する」の男性・複数・与格.ここでは名詞化して「隣接する人々,隣人」 bellum:第2変化・中性名詞bell-um, -i, n.「戦争,戦闘」の単数・対格 inferre:不規則動詞infero, inferre, intuli, illatum (inlatum)「もたらす,仕掛ける,押しつける」の不定法・能動相・現在 possent:不規則動詞possum, posse, potui, -「(+不定法で)〜できる」の接続法・能動相・未完了過去.主動詞が副時称(過去時称)なので,接続法・未完了過去は主動詞に対して,「同時」または「以後」を表す |
第2文 qua:関係形容詞の女性・単数・奪格.内容的にはセミコロンの前の文をうける. ex:奪格支配の前置詞「〜から」 parte:第3変化・女性名詞pars, partis, f.「部分,地方」の単数・奪格.ここでは「(対立する,対照的な)諸点のうちの一つの観点,問題点,事項」(『オックスフォードラテン語辞典』の同項目13のcに引用例)の意味で,qua ex parteで「この点から,この理由から」となる homines:第3変化・男性名詞homo, hominis, m.「人,人間」の複数・主格 bellandi:第1活用動詞bello, bellare, bellavi, bellatum「戦う,戦争する」の動名詞(単数のみで主格なし)・属格 cupidi:第1・第2変化形容詞cupid-usm, -a, -um「(属格を支配して)〜を望む,欲する,切望する,〜したくてしょうがない」の男性・複数・主格 magno:第1・第2変化形容詞magn-us, -a, -um「大きな」の男性・単数・奪格 dolore:第3変化・男性名詞dolor, doloris, m.「悲嘆,苦しみ,苦痛」の単数・奪格 adficiebantur:第3活用・第2形動詞adficio (afficio), adficere(afficere), adfeci (affeci), adfectum (affectum)「影響を及ぼす,作用する」の直説法・受動相・未完了過去・3人称・複数.受動相で「(+奪格で)〜の影響を受ける,〜を蒙る」となるので,ここでは「大変苦しい思いをしていた,辛い目に遭っていた」 |
(試訳) これらの事情によって,次のような状況になっていた.彼らは比較的狭い範囲で往来し,隣人に対して戦争をしかけるのもままならなかったのだ.この点で,好戦的な人々である彼らは大いに辛い思いをしていたのだ. |