ラテン語入門(第3講)

1.名詞の変化(第2変化男性型)
2.名詞の変化(第2変化中性型)
3.前回「練習」解答と今回の「練習」

※1.名詞の変化(第2変化男性型)

 さて,まだ「マニフィカト」の歌詞は第1行である.

Magnificat anima mea Dominum.

 第1語は動詞(第1活用直説法能動相現在3人称単数),第2語は名詞(第1変化女性名詞単数主格)とわかったので,次は第3語と行きたいところだが,これは形容詞で,第1変化,第2変化の名詞を一通り説明してからの方が(今日中に説明できる)わかりやすいので,後回しにして,第4語を検討する.

 この語は元来「主人」という意味の普通名詞ですが,キリスト教では「主イエス・キリスト」を意味し,その場合語頭の文字を大文字で書く場合が多いようです.この講義では基本は古典語なので,まず普通名詞のように扱う.まず,この語の格変化は以下のようになる.

単数・主格:dominus(ミヌス)
単数・呼格:domine(ミネ)
単数・属格:dominiミニー)
単数・与格:dominoミノー)
単数・対格:dominum(ミヌム)
単数・奪格:dominoミノー)

複数・主格:dominiミニー)
複数・呼格:dominiミニー)
複数・属格:dominorum(ドミールム)
複数・与格:dominis(ミニース)
複数・対格:dominos(ミノース)
複数・奪格:dominis(ミニース)

これを表にすると,

  単数    複数
 主格  dominus domini
 呼格 domine domini
 属格 domini dominorum
 与格 domino dominis
 対格 dominum dominos
 奪格 domino dominis

 このタイプの変化は「第2変化」名詞で,殆どの場合は男性名詞である.第1変化が

rosa, rosae

と覚えて2番目の単数・属格によって「第1変化」であることが明示され,なおかつその形から単数・属格の変化語尾である-aeを取った残りが「語幹」であったことを思い起こすと,この名詞は

dominus, domini

と覚え,第2変化であることを示す第2変化に特徴的な単数・属格の変化語尾は-i(イー)であり,それを取った残りのdomin-が「語幹」であることがわかる.

 もう一つ「キャンパス」の語源になった「野原,平原」

campus, campi (カンプス,カンピー)

の変化を見てみる.

単数・主格:campus(ンプス)    
単数・呼格:campe(ンペ)     
単数・属格:campiンピー)    
単数・与格:campoンポー)    
単数・対格:campum(ンプム)   
単数・奪格:campoンポー)     

複数・主格:campiンピー)
複数・呼格:campiンピー)
複数・属格:camporum(カンールム)
複数・与格:campis(ンピース)
複数・対格campos(ンポース)
複数・奪格:campis(ンピース)

これを表にすると,

  単数     複数
 主格  campus campi
 呼格 campe campi
 属格 campi camporum
 与格 campo campis
 対格 campum campos
 奪格 campo campis

語幹のcamp-と取った残りの変化語尾は「主人」の場合と全く同じであることがわかる.

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※2.名詞の変化(第2変化中性型)

 実は第2変化名詞にはもう一つのタイプの変化パターンがあり,これは全て中性名詞と考えて良い.「主人」のタイプを便宜的に「男性型(樹木の名前などに一部女性名詞が存在),これから学ぶタイプを「中性型」と言っておく.「中性変化の特徴」を覚えておくと,特別にこの変化を暗記する必要はない上に,その他のタイプ(特に第3変化)の中性名詞の変化にも応用できるので,あわせて見てみる.「贈り物」という意味の語である.

単数・主格:donum(ーヌム)
単数・呼格:donum(ーヌム)
単数・属格:doniーニー)
単数・与格:donoーノー)
単数・対格:donum(ーヌム)
単数・奪格:donum(ーノー)

複数・主格:dona(ーナ)
複数・呼格:dona(ーナ)
複数・属格:donorum(ドーールム)
複数・与格:donis(ーニース)
複数・対格:dona(ーナ)
複数・奪格:donis(ーニース)

これを表にすると,

  単数     複数  
 主格  donum dona
 呼格 donum dona
 属格 doni donorum
 与格 dono donis
 対格 donum dona
 奪格 dono donis

中性の特徴
1. 単数でも,複数でも主格・呼格・対格はそれぞれ同形となる
2. 複数の主格・呼格・対格は-aで終わる

 この二つの「特徴」に気をつければ,その他の箇所では男性型の変化と全く同じであることがわかる.したがって,中性型であっても単数・属格が-iである第2変化名詞であることに変わりはないことになる

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前回「練習」の解答と今回の「練習」

第2講「練習」解答

1.

   単数       複数   
 1人称  laudo laudamus
 2人称 laudas laudatis
 3人称 laudat laudant

2.

   単数       複数   
 主格  vita vitae
 呼格 vita vitae
 属格 vitae vitarum
 与格 vitae vitis
 対格 vitam vitas
 奪格 vita vitis

3.

   単数       複数   
 主格  puella puellae
 呼格 puella puellae
 属格 puellae puellarum
 与格 puellae puellis
 対格 puellam puellas
 奪格 puella puellis

第3講「練習

1.第1変化・女性名詞「テーブル」mensa, mensaeを格変化させなさい.

   単数       複数   
 主格  mensa
 呼格
 属格 mensae
 与格
 対格
 奪格

2.第1変化・女性名詞「星」stella, stellaeを格変化させなさい

   単数       複数   
 主格  stella
 呼格
 属格 stelllae
 与格
 対格
 奪格

3.第1活用動詞exulto, exultare, exultavi, exultatum「喜ぶ(跳びはねる)」を直説法・能動相・現在で活用させなさい

   単数       複数   
 1人称 
 2人称
 3人称

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